ついに国の鳴り物入りで「自筆証書遺言保管制度」がスタートしました。
法務省では「遺言書はこれまで自宅で保管する人が多く、紛失や改ざんの懸念があり、トラブルの防止や相続を円滑にするのが狙い」とその主旨を説明している。
相続によるトラブルが頻発している中で始まった新しい制度ですので、もちろんメリットがたくさいありますが、利用するにあたり注意しなければならない点も多々あります。
この制度は、よく公正証書遺言と比較せれることが多いですが、公的機関(法務局「公正証書遺言は公正証書役場」)が保管するので、公正証書遺言制度の利用が激減するとの見解もありますが、紐解いてみるとまだまだ公正証書遺言の良い点が明るみになりますので、どうぞ最期までお付き合い下さい。
まず「自筆証書遺言保管制度」の大きな特徴を挙げますと、下記の点があります。
◆法務局が形式的な確認をしてくれる
◆死亡時に推定相続人に遺言書の存在を通知する
◆保管制度を利用していれば、裁判所の検認手続きが不要
◆遺言者が亡くなった後、保管してあれば法務局で検索ができる
◆法務局が遺言者本人確認の後、原本と画像データで保存する
やはり、これらの内容ですと、確かに公正証書遺言と遜色ないように感じます。
しかし、大きな落とし穴がありますので、ご注意ください。
自筆証書遺言を法務局が保管
今まで自筆証書遺言を作成した場合、遺言者または相続人が保管しなければなりませんでした。
これですと、遺言の内容に納得のしない相続人が改ざんしたり、盗難したりなどの可能性が十分に考えれますし、実際に遺言書の改ざんや盗難は発生しておりました。
この点について、原本は死後50年、スキャナーで読み込んだ画像データは死後150年保存されますので、大きなメリットと言える改正ポイントだと思います。
法務局が形式的な確認をしてくれる
これについては、非常に勘違いをされている方が多いです。
法務局のホームページにも記載されている通り、法務局は持ち込まれた自筆証書遺言の内容について、一切の相談を受付けしておりません。
ここで言う「確認」とは、「日付(作成年月日)」「署名」「押印」が適切に記載されているか否かの確認であり、遺言書の内容が有効かどうかを法務局が確認してくれるものではありません。
この制度を利用した場合、裁判所の検認手続きが不要となりますので、非常に勘違いされやすいのですが、ご自身で書かれた遺言書の内容について、法務局は一切のアドバイスや確認をするわけではなく、遺言書が形式的に有効であるか否かを確認してくれるだけです。
財産目録を手書きしなくてもよい
自筆証書遺言は、遺言者がすのすべてを自署しなければならないのが原則でした。
しかし今回の改正では、財産目録部分に限り、パソコンなどによる作成を認めるということになりました。
財産目録まで手書きしなければならないのは、遺言者にとって大きな負担となっておりましたので、手続きの簡素化をいう意味では、大きく前進した改正ポイントだと思います。
申請料:3,900円/1件
自筆証書遺言は、遺言者ご自身が書いて保管するものでしたので、費用は全くかかりませんでした。
もちろん、自筆証書遺言を書いた上でご自身で保管する制度は廃止となっておりませんので、ご自身で保管する分には今まで通り費用はかかりません。
しかし、今回新たに新設された保管制度を利用する場合、申請手数料として3,900円がかかります。
申請者は誰か
法務局による自筆証書遺言保管制度を利用するにあたっての申請者は、遺言者本人でなければなりません。
代理人による申請は一切認められておらず、ご自身が法務局に出向いて手続きをしなければなりません。
申請者本人が申請しれば良いので、申請時の付き添い等は認められてます。
まとめ
この度の改正は、自筆証書遺言を広く周知してもらうためには、インパクトある改正であったと評価できそうです。
財産目録作成を手書きしなくても良い点や、保管制度を使用した場合、裁判所による検認手続きを不要とする点等は、手続きの簡素化という観点から大変意義あるものだと思います。
一方で、自筆証書遺言に基づいて相続手続きを行う場合に最も多い、内容の不備については、形式的な部分の確認はしてくれるものの、詳細については、アドバイスがありませんので、本制度とよく比較される公正証書遺言を見比べますと大きな相違点です。
また、内容が担保されないが故に、例え法務局が形式的な確認をしてくれるからといっても、専門家などに事前相談や内容の確認をしてから、保管手続き申請した方が賢明であると私は思います。
争いを避けるためにも、遺言書を遺しておくことは絶対におススメします。
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