実はぼく、日本刀が大好きなんです。
というよりも、骨とう品全般が好きで、その延長線上に日本刀があるみなたいなイメージです。
今はもう所有しておりませんが、一時は日本刀3振りくらい保有しておりまして、特に日本刀関連アイテムの中でも「鍔」が好きで、何時間見てても飽きないくらい眺めていることができます。
こんなことをあちらこちらで、お話しておりましたら、なんと6月に八戸市内某所で開催される日本刀愛好会のような集まりにお誘いいただきました。
とても嬉しいので、なにがなんでも参加する予定です。
と、いきなり日本刀のお話から始まりましたが、今日ぼくが本当にお話したことは少し違います。
税法上の「伝家の宝刀」
皆様、税法上の伝家の宝刀というのを聞いたことはありますでしょうか。
「法律的にはセーフだが、税務署長の判断でその税務処理を否定できる」
法人税法132条「同族会社の行為計算の否認」がその一つです。
過去にはIBMやヤフーが、この伝家の宝刀を抜かれて最高裁まで争ってます。
そして今日また、伝家の宝刀が抜かれて最高裁まで争われた裁判の判決が下されました。
「路線価に基づき算出した遺産相続マンションの評価額が市場価格より低すぎるとして国税当局が例外規定を適用した追徴課税処分」です。
具体的な内容については、わかりやすく紹介しているサイトがありましたので、リンク貼付しておきます。
相続対策としての賃貸不動産購入が否定された案件の詳細について
不動産の価格は、固定資産税評価額、相続税評価額の他、実勢価格というものが存在します。
この実勢価格というのが、なんとも曖昧で、売主が100万円だといえば、その土地は100万円だし、極端な話ですがその同じ土地を売主が1億円だと言えば、その土地は1億円なのです。
あくまでも1億円で売れなければ、1億円の価値がない土地ですので、結果的には売主の売却希望価格と買主の購入希望価格の折り合いがついた価格帯が実勢価格なのですが。。。
しかし今回の判決は、この不動産取引の市場原理を真っ向から否定した判決のように感じます。
仮に国税当局が市場価格より低いと判断するのであれば、公的価格(地価公示価格や調査価格または固定資産税路線価等)より何パーセント増の取引が、今回のような判断をするのか明確にしなければ、売り手の売却希望価格と買い手の購入希望価格で取引が成立している不動産取引市場を脅かすことになると思います。
今回のケースとは逆のパターンで贈与税対策で固定資産税評価額等より著しく低い価格での取引は、然るべき理由がある場合でなければ、当局から指摘が入る可能性があるという認識はありましたが、反対に評価額等からかけ離れた高い金額での取引は数多く事例が存在します。
実際に評価額から実勢価格を算出する際も、一定の数字を「割増」して算出するのが慣習となっております。
その上で相続税対策として、現金を不動産にするというスキームが一般的になっているのです。
今後の不動産市場
今日の最高裁の判決は、不動産取引市場に大きな影響があると感じます。
国税局の伝家の宝刀であるからこそ乱用は禁物で、相続税対策と現金を収益不動産にして保有するというスキームを否定するのであれば、このタイミングで明確な基準を示すべきであったと思います。
実際に判決後に記者会見した、原告弁護団は「基準を示してほしかった。税務署の担当者によって、恣意(しい)的な課税が可能になりかねない」と不満を述べてます。
一方で相続問題に詳しい相続税理士法人レガシィの大山広見税理士は「今回のケースでは、市場価格と路線価による評価額に4倍以上の開きがあった上、金額や不動産を取得した年齢など、複数の要因が重なったことで『明らかな節税対策』とみなされた」と指摘しております。
110万円の暦年控除規定にメスが入ったり、相続税対策に対しての締付けは、これからも厳しさを増すのは間違いないでしょう。
伝家の宝刀が錆びついたと揶揄された判例もありましたが、今日の判決はどのように評価されていくのでしょうか。
抜いても殺傷能力が低ければ伝家の宝刀と言われなくなりますが、あちらこちらで抜きまくっても伝家の宝刀とは言えなくなります。
1990年の不動産融資総量規制が発令されてからの不動産業界は悲惨なものです。
何を契機に不動産業界が下降の一途を辿り始めるか、誰にも予想はつきませんが、この判決が総量規制の二の舞にならないことを祈ります。